ルイス・バラガン研究
メキシコを代表する建築家、ルイス・バラガン。光、色、陰翳、シークエンス、時間などの要素の中で、豊かな空間を作るためにバラガンが何を試み目指したのか、空間の特徴やバラガンの言葉を紐解きながら研究。また、公で語ることが少なかったバラガンであるが、未だ翻訳されていないバラガンに関するスペン語文献の和訳を通じ、バラガンの思想やその人生感についての読解を進めている。
[活動]
「ルイス・バラガン研究会」運営・主催(2022~)
「ルイス・バラガン自邸と仕事場(世界遺産)」レクチャー(2024.5/芝浦工業大学)
「ルイス・バラガンの建築とランドスケープ」レクチャー(2024.1/立命館大学)
「メキシコの現在とバラガン建築」/『Bulletin No.298』2024冬号(日本建築家協会)掲載(2023.12)
「ルイス・バラガン自邸と仕事場(世界遺産)」レクチャー(2022.10/千葉大学)
「ルイス・バラガンを読み解く12のテーマ」(2021.1/HOPSCOTCH講演会)
『オルテガ邸の解説』和訳(2019)
ルイス・バラガン財団研究員(2019)
: ルイス・バラガン邸(世界遺産)における日本語/スペイン語ガイド
Photo:TAKU MINAGAWA

時間帯によって大きく印象を変える階段ホール。ゲーリッツの絵画 "MENSAJE(メッセージ)" は、空間への光の反射を最大限にもたらす配置がされている。

青のバラガン。夕暮れ時はより一層の静寂さに包まれ、空の青が空間に取り込まれる。 バラガンは樹木の色である緑を壁の色彩として使うことは無かったが、青もそれと同じ要素なのだと気づかされる。

階段ホールを見上げる。ハイサイドから差し込む光は壁に反射し、ホール全体を明るくする。壁は単なる空間を仕切るものではなく、いくつもの意味をもたせるのがバラガンの手法。

”住宅の中に宝物があるのです"と語り、インテイリア空間を重要視したバラガン。その外観は至って素朴であり、また、バラガンが旅をした北アフリカの建築の影響を感じる事ができる。

午後、西からの光が木漏れ日を作る。”住宅は庭のように、また庭は住宅のように”とバラガンが語る様に、常に庭と住宅は一体のものとして考えられている。

"No veas lo que yo hice, ve lo yo ví"(私が作ったものを見ないで、私が見てきたものを見て下さい)。リビングに置かれた家具(facistol)には、バラガンが愛した沢山の芸術や街の写真が置かれている。

壁の高さや色使い等、時代の変遷と共に何度も試行錯誤が繰り返されたテラス空間。オレンジの壁は、住宅が建設されてから20年後に初めて塗られたもの。

天井面の梁、壁、屏風(biombo)が空間に奥行きを作り、居心地の良いスケール感をつくり上げている。

バラガンの庭には必ず水の存在がある。それはバラガンが幼い頃に過ごした記憶であり、空間に静寂さと喜びをもたらす要素である。

東側道路に面する格子のすりガラスと卓上の間接照明。バラガンは光のあり方をつねに考えて設計を行っていた。

ゲストルームにある ”Postigo” と呼ばれる光をコントロールするための4枚扉。上半分を開ければ、道からのプライバシーを遮りながらも光を取り入れることができる。
バラガンの書斎には約2300の蔵書があり、その中には日本に関する書籍がいくつかある。バラガンは日本に訪れた事は無かったが、書籍を通じて日本の建築や庭等の在り方に触れていた。

バラガンのインテリアは、どこを切り取っても美しいと感じさせるものがある。バラガン邸では家具や装飾品はバラガンの生前のままの形で保存されており、バラガン自身、物の配置が変わる事を好まなかったと言われている。

色彩のイメージが強いバラガンだが、住宅の内部空間においては色彩が与えられている所は僅かである。バラガンの黄色はとりわけ象徴的な色で、通路には必ず黄色の要素が使われていた。
壁は石灰が塗られ、微妙なテクスチャーが光の陰翳を生み出している。これはメキシコの古い修道院やアシエンダ(荘園)で見られる素材でもある。

バラガンの空間はどこを切り取っても美しさがある。光、壁、アート、すべてが一つとなて空間を作り上げている。
バラガンの黒。階段ホールの床には火山岩を石油で黒く塗り上げた素材が使われている。外部空間に使うことが多い石を、バラガンは室内に使うことで中間領域としての空間を設計した。
バラガン邸で一番狭く、暗い部屋。しかしバラガンはここで一人で食事をとることを好んだと言う。孤独と向き合うための部屋。

吹き抜けの書斎は何枚もの壁に仕切られており、空間に豊かな奥行き感とシークエンスを与えている。
道路側の大窓から光が差し込む朝の時間。右側の壁にはバラガンの恋人であったアドリアナの絵が立て掛けてある。

庭を望むバラガンの寝室。ガラス部分はもともと床からの全面開口であったが、プライバシーと安全性の為、腰壁が設置された。

書斎から庭側を望む。腰壁が高さを変えてレイヤーの様に構成されており、室内のどこにいても庭の光を感じることができる。

タパンコ(屋根裏)、階段、木天井と梁など、所々にバラガンの記憶を辿ることができる空間。バラガンは "Un arquitecto sin recuerdo no es nadie" (記憶を持たない建築家は何者でも無い) と語っている。